「最近うちの猫、水をよく飲むようになった気がする」「ごはんをいつもより欲しがるのに体重が落ちている」――こうした変化に気づいたとき、糖尿病の可能性を頭に入れておくことが早期発見のカギになります。猫の糖尿病は初期症状が日常的な行動の延長に見えるため、発見が遅れやすい病気です。この記事では、飼い主が家庭で確認できるチェックポイントと、病院に行くべき具体的なタイミングを解説します。
猫の糖尿病とは――どんな猫がなりやすいか
発症しやすいのは「7歳以上・肥満・雄」の組み合わせ
猫の糖尿病は、すい臓からのインスリン分泌が不十分になるか、インスリンへの抵抗性が高まることで血糖値が慢性的に上昇する病気です。7歳以上の中高齢猫に多く、雄猫は雌猫よりも発症しやすいとされています。
肥満は最大の可変リスク因子です。肥満の猫は糖尿病のリスクが明らかに高まることが知られています。室内飼育による運動不足や、炭水化物の多い食事も、危険因子のひとつと考えられています。
猫の糖尿病はなぜ「気づきにくい」のか
猫の糖尿病はヒトの2型糖尿病に近いタイプ(インスリン非依存型から始まることが多い)で、初期はインスリン分泌がある程度保たれています。そのため「少し食欲が増えた」「水を飲む量が増えた」程度の変化しか現れず、飼い主が老化や季節の変化と見誤るケースが少なくありません。
家庭でできる初期症状チェック――具体的な数値で判断する
四大初期症状:多飲・多尿・多食・体重減少
猫の糖尿病でよく見られる四大初期症状は次のとおりです。
- 多飲:1日の飲水量が体重1kgあたり100ml超を継続的に超える(例:4kgの猫なら400ml超が目安)
- 多尿:1日の尿量が体重1kgあたり50ml超を継続する、またはトイレの砂のかたまりが明らかに大きく・多くなる
- 多食:以前より頻繁にごはんを要求する、食事量が増えている
- 体重減少:食べているのに体重が落ちている。短期間で目に見えて痩せた場合は要注意
これらの症状のうちどれかが続いている場合は、早めに動物病院を受診してください。複数当てはまる場合は特に、様子を見ずに受診しましょう。
飼い主が気づいたリアルな変化――こんなシーンが受診のきっかけになる
糖尿病の猫の飼い主がよく気づく変化として、以下のようなものがあります。
- ウォーターファウンテンの補充頻度が週2回から毎日になった
- ケージのトイレシートが朝晩の2回取り替えでも追いつかなくなった
- 缶フードを完食するようになったのに、背骨や腰骨が触れるほど痩せてきた
「なんとなくおかしい」という感覚を数値や行動の変化として記録しておくことが、診察時の重要な情報になります。
後ろ足がふらつく「糖尿病性ニューロパチー」にも注意
糖尿病が進行すると、高血糖による末梢神経障害から後ろ足の踵が地面につく「かかと歩き(プランティグレード歩行)」が現れることがあります。この症状が出ている場合、すでに中等度以上に進行している可能性が高く、早急な受診が必要です。
病院でおこなわれる検査――診断のポイントを知っておく
血糖値と尿糖:最初に確認される2つの指標
動物病院では、まず空腹時血糖値と尿糖が確認されます。猫の正常な血糖値は70〜150mg/dL前後とされており、高い値が持続する場合は糖尿病の可能性が高いと判断されます。尿糖陽性も同様に重要な所見です。
ただし猫はストレスで一時的に血糖値が上昇する「ストレス高血糖」を起こしやすいため、1回の測定だけでは確定診断に至らないことがあります。
フルクトサミン検査が早期診断のカギ
ストレス高血糖と真の糖尿病を区別するために有効なのがフルクトサミン検査です。フルクトサミンは過去2〜3週間の血糖コントロール状態を反映する指標で、一時的な血糖上昇には影響されません。初期症状がある猫では、血糖値とあわせてフルクトサミンを測定することで、より正確な早期診断が可能になります。
治療の見通し:「寛解」する猫もいる
早期に適切な治療(インスリン投与と食事管理)を開始した場合、インスリン投与が不要になる「寛解(糖尿病緩解)」に至る猫もいると報告されています。寛解率を高めるには診断後すみやかに治療を開始することが重要であり、早期受診が予後を大きく左右します。
受診前に飼い主ができること――記録と食事管理
「飲水量・尿量・体重」を1週間記録する
受診前の1週間、以下を記録しておくと診察がスムーズに進みます。
- 1日の飲水量(水を計量カップで入れ、翌日残量を引く)
- トイレの砂のかたまりの個数・大きさ(写真でもよい)
- 体重(週2回、同じ時間帯に測定)
- 食事量と食欲の変化(いつもより多く食べているか)
肥満猫は今すぐ食事内容を見直す
肥満は糖尿病のリスクを高めるため、診断前であっても食事の見直しは早いほど有益です。ただし急激なカロリー制限は肝リピドーシス(肝臓への脂肪蓄積)を引き起こす危険があるため、食事内容の変更は必ず獣医師の指導のもとで行ってください。高タンパク・低炭水化物の食事が血糖管理に役立つとされていますが、どのフードが合うかは獣医師に相談してください。
まとめ
- 猫の糖尿病は7歳以上・肥満・雄猫に多い
- 初期症状は多飲(体重1kgあたり100ml超/日が目安)・多尿・多食・体重減少の4つ
- これらの症状に気づいたら、早めに動物病院へ
- 血糖値が高い状態が続く、または尿糖陽性は糖尿病を疑う指標
- フルクトサミン検査で過去2〜3週間の血糖状態を評価し、ストレス高血糖と鑑別できる
- 早期に治療を始めると、寛解(インスリン不要)に至る可能性がある
※この記事は一般的な情報です。気になる症状があるときは、早めに動物病院を受診してください。

