「最近うちの子、暗いところでよくぶつかるな」「なんとなく歩き方がぎこちない」——そんな変化を老化のせいと思って見過ごしてはいませんか? 実は猫にも高血圧があり、10歳以上の猫では珍しくないとされています。この記事では、見逃しやすいサインから緊急受診の基準まで具体的に解説します。
猫の高血圧とは?正常値と重篤度の目安
血圧の正常範囲と高血圧の閾値
ISFM(国際猫医学会)の2017年ガイドラインによると、猫の収縮期血圧の正常範囲は120〜140mmHgです。160mmHg以上で高血圧と定義され、180mmHg以上は重度に分類されます。重度になると腎臓・眼・脳・心臓などの標的臓器に不可逆的な障害が生じるリスクがあり、治療目標は150mmHg未満に設定されます。
どんな猫がなりやすいか
高血圧は10歳以上の高齢猫に多く見られます。慢性腎臓病(CKD)を抱える猫では高血圧の併発が少なくなく、年齢が上がるほどCKDも増えるため、高血圧リスクも高まります。猫の高血圧の多くは二次性——すなわちCKDや甲状腺機能亢進症などの基礎疾患に由来します。
甲状腺機能亢進症との関係
甲状腺機能亢進症の猫では、治療前の高血圧の合併率は研究によって幅があり、治療後に新たに高血圧を発症することもあります。甲状腺の治療が完了したからといって血圧管理を終えてよいわけではなく、継続的なモニタリングが必要です。
見逃しやすいサイン——症状の重篤度別チェックリスト
【軽度〜中等度】日常の変化として現れるサイン
高血圧の初期は、飼い主が「歳のせい」と片付けやすい変化として現れます。以下のサインが複数重なる場合は受診を検討してください。
- 水を飲む量・トイレの回数が明らかに増えた
- 食欲が落ちた、体重が減ってきた
- 呼びかけへの反応が鈍くなった(聴力低下との区別が必要)
- 以前より元気がなく、遊ばなくなった
これらは単独では多くの疾患に共通しますが、10歳以上の猫でこうした変化が1〜2週間続く場合、血圧測定を含む検査を受けることが推奨されます。
【中等度〜重度】眼の変化——最も見逃されやすい緊急サイン
眼への影響は高血圧の最も典型的かつ危険な合併症です。網膜剥離や眼底出血が起きると急激な視力低下・失明につながります。以下のサインを確認してください。
- 暗い部屋でいつもより家具にぶつかる
- 瞳孔が左右非対称、または通常より大きく開いたままになっている(散瞳)
- 眼球表面に出血が見える
- 顔の前で手を動かしても追わない
これらのサインが見られた場合は当日中に動物病院へ連絡してください。網膜剥離は、早期に治療を始めるほど回復の可能性が高まります。
【重度】脳・神経症状——即日受診が必要なサイン
血圧が極めて高い状態(180mmHg以上)が続くと、脳への血流障害により神経症状が現れます。以下が報告されている症状です。
- ふらつき・まっすぐ歩けない・ぐるぐる旋回する
- 頭を壁や床に押し付け続ける(ヘッドプレッシング)
- けいれん発作
- 鳴き声が突然大きくなる、夜間に混乱した様子で鳴き続ける
これらの神経症状は高血圧性脳症のサインであり、時間単位で状態が悪化します。発見したらすぐに動物病院に電話し、指示を仰いでください。
診断と治療——動物病院でできること
血圧の測り方
猫の血圧測定には動物病院での専用機器が必要で、ドップラー法またはオシロメトリック法が用いられます。自宅での測定は現実的でなく、かつ「白衣高血圧」(病院環境でのストレスによる一時的な血圧上昇)を除外するために、複数回の計測が標準的です。
第一選択薬と治療目標
猫の高血圧治療の第一選択薬として、アムロジピン(カルシウム拮抗薬)が国際的に広く用いられています。使用する薬や量は猫の状態によって異なるため、必ず動物病院で相談してください。治療目標は収縮期血圧150mmHg未満であり、基礎疾患(CKD・甲状腺機能亢進症)がある場合はそちらの管理も並行して行います。
10歳以上の猫は症状がなくても定期測定を
ISFM 2017年ガイドラインは、10歳以上の健康に見える猫でも定期健診時に血圧測定を受けることを推奨しています。高血圧は症状が出る前から臓器にダメージを与えるため、無症状期に把握することが重要です。年1〜2回の健診に血圧測定を組み込むことを獣医師に相談してみてください。
まとめ:今日から実践できる確認ポイント
- 猫の収縮期血圧は160mmHg以上で高血圧、180mmHg以上は臓器障害リスクが高い重度(ISFM 2017基準)
- 高血圧は高齢猫に多く、CKDや甲状腺機能亢進症との併発が多い
- 暗所での衝突・散瞳・眼の出血は網膜剥離のサインで、当日中に受診が必要
- ふらつき・旋回・ヘッドプレッシング・けいれんは即日受診が必要な神経症状
- 「元気がない」「水飲み量が増えた」だけでも高血圧のサインであり得る——加齢と決めつけない
- 10歳以上の猫は症状がなくても、年1〜2回の健診で血圧測定を受けることが推奨される
※この記事は一般的な情報です。気になる症状があるときは、早めに動物病院を受診してください。
